Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

卍 (新潮文庫)
卍 (新潮文庫) [文庫]
著者:谷崎潤一郎
評価:B

日本屈指の文豪にして変態性欲書かせたら日本一・谷崎潤一郎はん昭和初期ン作やで。百合で有名やんな。百合ゆうても、具体的な描写はあんましあれへん(下の引用参考にしてな)さかい脳内補完たのんます。一頁あたりの文字ン密度がごっつ高うて読むン疲れるかも知れへん。
園子ゆう女主人公がな、先生こと谷崎に自分のけったいな体験語らはるゆう設定やさかい、全体通して大阪弁で語るように書かれたある。解説の中村光夫はん曰く、「この小説に使われた大阪弁が実際の大阪人の耳にはかなり未熟に響いた」ゆうことやけど、ボクは割合違和感あれへんかったわ。
そんで話やねんけど、最初、園子な、光子はんいうベッピンに惚れてしもてん。光子はんもまんざらちゃうねん。ほんでも園子旦那おったから道ならぬ恋やんか。夫婦仲亀裂入ってもうた、けどこン時はまだ見てられてん。やけど綿貫ゆうごっつワルいヤツ出てきてからはもうアカン、見てられへんで。光子はんと綿貫、あの手この手でお互い出し抜こと醜い争いの始まりや。結局園子の旦那も巻き込んで『卍』マークの出来上がり~。

“「ああ、憎たらしい、こんな綺麗な体してて!うちあんた殺してやりたい」わたしはそう云うて光子さんのふるてる手頸しっかり握りしめたまま、一方の手エで顔引き寄せて、唇持って行きました。すると光子さんの方からも、「殺して、殺して―――うちあんたに殺されたい、―――」と物狂おしい声聞えて、それが熱い息と一緒に私の顔いかかりました。見ると光子さんの頬にも涙流れてるのんです。二人は腕と腕とを互いの背中で組み合うて、どっちの涙やら分らん涙飲み込みました。”

“二人は結局誰も見てる者ないのんええことにして、草のぼうぼう伸びてる蔭に、それこそほんまに、大空の雲よりほかに知ってる者のない隠れ場所見つけて、「光ちゃん、………」「姉ちゃん、………」「もうもう一生仲好うしょうなあ」「あて姉ちゃんと此処で死にたい」―――と、お互いにそない云うたなり、それから後は声も立てんと、どのぐらいそこにいたんのやら、時間も、世の中も、何もかも忘れて、私の世界にはただ永久にいとしい光子さん云う人があるばっかり。………”