夢を売る男 [単行本]
著者:百田尚樹
評価:B+
マッハで読んだ。『寄生獣』のあのオッさん風に言えば「読ませる文章だ」。自分の心の底を見透かされたような気がした。
作中の「カモ」たちのように、自分も「一本くらい小説書けるんじゃね?」と思ったことは幾度もある。けれど、この時代に本を売って黒字にすること、作家一本で食っていくことがどれだけ非現実的なのかを思い知らされた。仮に本を出版することがあるにしても、大きな夢を見ず自己満足程度にとどめておくべきなのだろう。
牛河原と荒木の会話で次々と明らかにされていく、知りたくなかった出版業界のウラ。しかし、それをむさぼるように読ませてしまうのは、やはりこの著者の才能なのだと思う。しっかり自分を牛河原たちにけなさせているのもこの作者らしい。牛河原が稀に見せる良心もまた彼を彼たらしめている。
小説が売れようが売れまいが関係ない。物書き志望が増えるのは、ブログやSNSの隆盛による必然なんだ。それと、皆がスターになりたがっている。昔は、舞台は観るものだった。しかし今は、皆が舞台に上がりたがって、観客は一人もいないという状況だ