【概要】
著者(監督):佐藤究
地獄をも超越する戦いの神、夜と風(ヨワリ・エエカトル)、われらは彼の奴隷(ティトラカワン)、煙を吐く鏡(テスカトリポカ)。
黒曜石でできた角川の鈍器。ゆかいな家族(ファミリア)たちのスペイン語ニックネームや各章の数字フォントがオシャレ。 メキシコで、川崎で、ジャカルタで、麻薬密売人、臓器の闇マーケット、人殺しも辞さない反社集団など、アウトローたちの祭りが開催される。メキシコから離れて200頁(Ⅱ章)ぐらいになると面白くなってくる。どうやって終わらせる気かと思っていたら最後は無事全滅(ほぼ)。
怪力で首をへし折ったり腕を凍結粉砕したりと暴力的だが慣れる。いやむしろ求めるようになっていく! ちょくちょくアステカの神々の幻影と生贄の儀式のイメージが挿入されて夢うつつの状態にさせられる。
バルミロ、末永らを中心とする犯罪集団は、クルーズ船で日本人児童の心臓を富裕層に売る臓器売買ビジネスを思いつき、その実現に向け全精力を傾ける。心臓摘出実演 、ナイフ製作、闘牛、裏切り、減圧手術室での死闘などのハイライトは数あれど、やはり細部の作り込みが一見荒唐無稽な設定を肉付けしている(手塚治虫の『グリンゴ』まで👀)。純粋な暴力を導かれるままに振るうコシモ君はどうなる―――。
なぜ自分が兄弟と家族を奪われ、メキシコを追われ、何のためにこの遠い極東の島国まで流れ着いたのか、瞬時に すべてを理解した。それは復讐のためではなく、アステカの神に出会うためだった。この身を彼に捧げるためだった。桁ちがいの獰猛な美しさに目を奪われた。バルミロは恐怖に包まれ、絶望の中の歓喜を味わった。バグラーダの引き金を引き、銃口が火を噴いた。勝てないことはわかっていた。ただバルミロは。髪の前で自分が戦士であることを証明したかっただけだった。
大好きだった祖母のしわがれた声が聞こえた。
われらは彼の奴隷(ティトラカワン)。
「よるとかぜはめにみえない」とコシモは言う。「おれたちはゆめをみたんだろうな」
【詳細】
<目次>
- 1 顔と心臓
- 2 麻薬密売人と医師
- 3 断頭台
- 4 夜と風
- 暦にない日
<メモ>
そういえばこんなのも。