Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

ヒトラーに抵抗した人々 反ナチ市民の勇気とは何か

ヒトラーに抵抗した人々 反ナチ市民の勇気とは何か (中公新書)

【概要】
著者(監督):對馬達雄

著者に語らせると、

反ナチ運動の担い手はじつに多岐におよぶ。無名の男女小市民から上層市民まで各層各界の人びとが反ナチ運動に関わっている。本書が着目したのは、そのなかでも既成の組織に縛られず後ろ盾もない人びとがいかに考え行動したかである。彼らを支えたのは、自らの責任で決断し事を引き受ける意志である。これを「市民的勇気(ツィヴィル・クラージュ)」という。
それを彼らはそれぞれの置かれた立場で自らの行為として表した。通底するのは、ナチズムにたいする倫理的闘いであったことである。本書では《クライザウ・サークル》の人びとを中心に述べたが、その一端を読みとっていただけたと思う。

ということで、反ナチ運動というと1944.07.20事件(シュタウフェンベルク大佐のワルキューレ作戦)などが有名だが、学生中心の白バラグループやインテリ層のクライザウ・サークル、個人でチョビヒゲ暗殺を決行した彼など、市井の人びとの命がけの活動を紹介。また曰く、

ナチス期ドイツのユダヤ人救援活動にはあらゆる階層の人びと、老若男女、小市民、酒場界隈の住人、修道院関係者、労働者、企業家、さらにはナチ党員さえ関与し、その三分の二が女性であったとされている。

そんな沈黙の勇者たちの軌跡を紹介。「諸国民の中の正義の人」はドイツにも意外といた。ていうか「ヒトラーに感謝する大多数のドイツ国民が一番の敵」だった…!

 

ちなみにワシが本書を知ったきっかけは以下の手紙の引用だ。

★クライザウ・サークルのライヒヴァインから娘へ

機会があったら、いつでも人には親切にしなさい。助けたり与えたりする必要のある人たちにそうすることが、人生でいちばん大事なことです。
だんだん自分が強くなり、楽しいこともどんどん増えてきて、いっぱい勉強するようになると、それだけ人びとを助けることができるようになるのです。
これから頑張ってね、さようなら。お父さんより。

 

【詳細】

<目次>

  • 第1章 圧倒的に支持されたヒトラー独裁と市民の抵抗(ヒトラーを歓迎するドイツ国民と反ヒトラーの人びと;ヒトラーの人心掌握と国民大衆の熱狂;ナチス人種政策と「声なき蜂起」のはじまり;戦時体制下の反ナチ運動)
  • 第2章 ホロコーストと反ナチ・ユダヤ人救援ネットワーク(迫害されるユダヤ人と救援者たち;救援グループ“エミールおじさん”)
  • 第3章 ヒトラー暗殺計画に関与する抵抗市民たち(知識人グループと軍部反ヒトラー派;孤独な暗殺者ゲオルク・エルザー;“七月二〇日事件”と市民グループの参加)
  • 第4章 反ナチ抵抗市民の死と“もう一つのドイツ”(ヒトラーの報復・民族法廷・「最期の手紙」;反ナチ抵抗市民の「もう一つのドイツ」―『クライザウ構想』)
  • 第5章 反ナチ市民の戦後(占領下ドイツに生きる遺族と生存者;分断国家のなかの反ナチ抵抗運動;「レーマー裁判」―名誉回復と顕彰のはじまり)

 

<メモ>

★クライザウ・サークル モルトケから息子へ

君たちにいっておきたいことがあります。父は学校で学んでいたときから、偏狭で暴力に訴える考えや不遜で寛容を欠く考えに反対してきました。
そうした考えがドイツに根を張りナチ国家になって顕れ出たのです。それは暴力行為、人種迫害、信仰の否定、モノ中心の考えといった最悪のナショナリズムだったのです。こうした事態を克服しようと、父は一所懸命がんばりました。しかしナチスの立場からすると、そうした父は殺害せざるをえないことになるのです。

 

ナチズムに敵対し抵抗する人びとには、キリスト教倫理(「隣人愛」に象徴される)は究極的に自分の生き方を支え律する潜在的な力であった。

 

倉敷の寓居にて。←著者

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