【概要】
著者(監督):ヨハン・レンク
- チェルノブイリ原発事故を1時間x5回でリアルに再現。いきなり重要人物が自殺し、事故発生時まで時間遡行する。事故発生から数時間、数週間、数か月後を描く。パッケージ画像がペストっぽい。
- (ロシアが忠実に事故のあれこれを描くとは思えないので)仕方ないのだが、基本原語は英語ではなくウクライナ語かロシア語でお願いしたいところだ。たまにロシア語が出てくるのだが、そのときは大体不気味な雰囲気がマシマシになっているときだ。
- 火傷のごとくただれた皮膚や吐き気、紫斑など、原爆投下後の広島や長崎みたいな彷彿とさせる急性被曝の痛ましい描写が印象的であった。他にもチェレンコフ光の輝き、無慈悲に進められる強制退去と除染、被曝者の棺や処分された動物たちがコンクリートでゆっくりと埋められるシーンとか。
- 後半から始まる裁判がおもしろい。模型と加速/減速プレートを使った非専門家向けプレゼンが小気味よい。作業員の制止を封殺するパワハラ風土と安全軽視、コストカットによる安全対策の不十分など、いつ災害が起こってもおかしくなかった模様。やはり人類には原子力は早すぎたのかもしれない。AZ5ボタンを押したときにはすでに手遅れであった。地獄の釜が開いた。
- 原発作業員はもとより、消防士とその妻や病院関係者、ハンター青年、そして科学者レガソフと共産党の偉いおじさん。当初はいがみあっていたが予想通りバディになる。"it must be done."やらねば。そこに創作女性も入れそして3人トリオに。ソ連の良心を描いた群像劇だったりする。レガソフはソ連糾弾の爆弾発言で軟禁、遺言をテープに残し冒頭のキックザバケットに戻る。
- 真実を追求する科学者の矜持とか、不妊を宣告された消防士の妻がまた身ごもったこととか、決死隊の2/3が生きのこったこととか、運命や巨大な力に負けない人間の意志や可能性を少し感じさせるところもある。
- 決死隊を組織してバルブを開閉したり、地下手掘りで熱交換器を設置したりとプラントエンジニアリング/オペレーション的に某3.11とやることは大して変わっていないのだなあと感じた。
【詳細】
<メモ>
- 水蒸気爆発からの14Si5Bの暗号ね。
- ゴルバチョフの頭部のシミの再現率ね。
- 線量計のジジジ音とか、放射線源に近づきすぎて落ちるヘリとか壊れるライトとか、怖かったなあ。
- 全裸炭鉱夫 VS. スーツを汚される石炭相。
3.11後は特に、リスクゼロは不可能であるが、重大事故は絶対起こしちゃいけないという認識が広まっている模様(一般ピーポーは理解していないかもしれないが)。
〇事故概要