【概要】
著者(監督):森岡毅 今西聖貴
USJ立て直しでおなじみのマーケター(現:刀マン)が、数学的マーケティングの要諦を解説。曰く、「ビジネス戦略の成否は『確率』で決まっている。そしてその確率はある程度まで操作することができ」、「日本社会の合理性を高めることに寄与すること」が本書執筆の目的。化粧品や洗剤などの消費財、AKB総選挙、USJのアトラクション(ひらパーも5㍉くらい出る)などを例に引きながら、使用するモデルや消費者視点の重要性を数式ありーので説明する(巻末解説で補完)。マーケティングには興味なくても、データ分析とか統計に興味がある人は読んでみて。
森岡:
- 確率論モデルで消費者の購買行動を抽象化でき、たとえばNBD(負の二項分布)モデルであればMとK(Mは選ばれる確率、Kは確率分布の形状)の2パラメータで記述できる。
- 消費者のPreference向上が最優先(他にはAwarenessとDistibutionがある)。
- アングロサクソンに代表されるサイコパス軍団と戦うためには「合理的に準備して、精神的に戦う」ことが重要で、日本人にはこれが足りない。
-
マーケティングの認知と当該部門の地位向上が必要。
今西:
- 「結局、仮説、仮説に対する推測値、ベンチマークの実績値の3つが、辻褄が合い自分自身にとって論理的にも感情的にもしっくりくるまで試行錯誤」する。
- 「昆虫の複眼のように現実を診る」
- 「群盲象を評す」のことわざから一歩踏み込んで、「できるだけ多くの点で象に触れてみる」ことが数値の定量的な予測には必要。類似例やデータに基づいた推定により、複数通りの方法で収益や費用を見積もってみる(平均値・標準偏差)。
がんばれ数学的マーケティング。がんばれ刀。
【詳細】
<目次>
- 序章 ビジネスの神様はシンプルな顔をしている
- 第1章 市場構造の本質
- 第2章 戦略の本質とは何か?
- 第3章 戦略はどうつくるのか?
- 第4章 数字に熱を込めろ!
- 第5章 市場調査の本質と役割
- 第6章 需要予測の理論と実際
- 第7章 消費者データの危険性
- 第8章 マーケティングを機能させる組織
- 解説1 確率理論の導入とプレファレンスの数学的説明
- 解説2 市場理解と予測に役立つ数学ツール
- 終章 2015年10月にUSJがTDLを超えた数学的論拠
<メモ>
しかし、それでも我々は「認識」と「現実」 の間に、データや数字や言語といった「記号」を媒介させて、現実の世界をできるだけ正しく知るしか方法がないのです。そのためには、間に必ずズレが生じていることを知った上で、
1) あらゆる「データ (記号)」の性格をよく理解し、できる限り現実に符合させながら読み解いていくこと。
2)できるだけ多角的な「データ(記号)」を用いて整合性のある現実の認識を構成していくこと。
この2つのアプローチしかないと私は考えています。