Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便

新装版 墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便 (講談社+α文庫)

【概要】
著者(監督):飯塚訓

日航123便墜落事故の遺体確認スタッフのなまなましい苦闘の記録。想像するのもおぞましい阿鼻叫喚の地獄の地獄だった模様。

謎の陰謀論もあるようだが、警察や医療従事者、自衛隊やボランティア、墜落する航空機の中で最後まで職務を全うしたパイロットや乗務員、家族への遺書を残した乗客…彼らの想いや生は嘘じゃない。

 

【詳細】
<目次>

  • 文庫版まえがき
  • 第一章 出動命令
  • 第二章 大量遺体
  • 第三章 最初の遺体確認
  • 第四章 悲しみの体育館
  • 第五章 看護婦たちの胸の内
  • 第六章 指紋、歯が語る
  • 第七章 身を粉にした医師の仕事ぶり
  • 第八章 遺体の引き取り
  • 第九章 過酷な任務
  • 第十章 極限の日々
  • 第十一章 最後の最後まで
  • 参考文献
  • 新装版のためのあとがき


<メモ>

 著者曰く、

遺族の極限の悲しみが集約された体育館の中で、各々の職業意識を越えて、同じ思いで同化していった一つの集団の記録を残したかった。「単独飛行機事故では世界最大」などという恥辱的な見出しの下に、死亡者の人数や自衛隊員、警察官、医師などの大量動員数を並べたてても、真実は伝わらず、また残らない。情報というのは、悲しみとか、怒りとか、汗や涙がしっかりとこもっていなければならないと思い、この本を書いた。

 

▶遺体一号

棺の中から、死体収納袋や毛布に包まれた遺体が警察官の手で取りだされ、ビニールシートの上に丁重に安置される。
「礼!」検視官の号令により、検視グループ一同が手を合わせ、 一礼して検屍が開始される。
「何だこれは……」
毛布の中から取りだした塊を見て、検視官がつぶやく。
塊様のものを少しずつ伸ばしたり、土を落としたりしていくうちに、頭髪、胸部の皮膚、耳、鼻、乳首二つ、右上顎骨、下顎骨の一部、上下数本の歯が現れてきた。
少女の身体は中央部で一八〇度ねじれてひきちぎれ、腰椎も真っ二つに切断され、腹部の皮膚で上下がやっとつながっている。
なかば焦げた左上肢、その中ほどに臓腑の塊が付着している。塊の中から舌と数本の歯と頭蓋骨の骨片が出てきた。
それらを丹念に広げてゆくと、ちょうど折りたたんだ紙細工のお面のように、顔面の皮膚が焦げもせずに現れた。
二歳くらいの幼児。顔の損傷が激しく、半分が欠損している。それなのに、かわいい腰部にはおむつがきちっとあてがわれている。
「こういうの弱いよなあ」
検視官がひとりごとのようにつぶやき、幼児の遺体を見つめている。それまでバシャバシャと切られていたカメラのシャッター音と閃光が一瞬止まった。

 

離断遺体は、肉体の離れた皮の塊、炭化して分解した真っ黒い塊、内臓の塊、毛髪と顔の皮膚の一部、手、足、下顎、上顎骨に指一本、歯牙一本に至るまで、まさに想像を絶するものばかりであった。

 

棺の中に、黒焦げになった木の根っ子のようなものが入っている。法歯の先生に診てもらうと、頭部と腰部の一部が逆転している。
黒く焼けた脊髄とおぼしき紐状の中から、子どもの乳歯(下顎前歯)が出てきた。
母親が子どもを抱きしめたまま…。

 

それゆえ、

人体の組織のうちでもっとも硬く、腐敗やそのほかの物理化学的変化に対して抵抗性の強い歯は、腐乱した離断遺体や炭化して分解した遺体、挫滅して人間としての識別のできない遺体等から、さまざまな状態で発見され、重要な確認資料となった。

凄絶すぎる…。

 

▶悲しみの体育館

死体の放つ悪臭ともうもうと漂う線香の匂いが、脱臭剤やホルマリン、クレゾール等の刺激臭と混ざって、自然界ではおそらく体験できないであろう異臭となって館内に立ちこめている。
腐臭や線香の煙を屋外に追いだす換気扇も故障していた。
八月の焼けつくような陽光が、体育館の屋根をじりじりとあぶり、館内の温度はついに四〇度まであがった。
体中から吹きでる汗は、額から滴り落ち、胸、腹、大腿に至るまで伝わるのがわかる。

 

他の列でも日航職員が正座して、棺の中に顔を半分入れて謝っている。そこには、下顎部から下の女性の挫滅遺体が納められている。
「いいか、よく見ておけ。私の娘だ。おまえらに殺されたんだ……」
白髪、初老の男性が職員の後頭部を右手で押さえ泣きながら、呻き声でいう。
こんな光景も初めてではなかった。
スリッパを投げつける。
胸元をつかんで壁に押さえつける。
プロレスまがいの跳び蹴りまでした遺族関係者もいた。
とにかく、異常な環境の中で、異常な光景がいつ終わるともなく、暗くどんよりとした体育館の中で、繰り広げられていった。
どちらにしても、悲惨な光景だ。

 

▶現場の献身

医師も歯科医師も、看護婦も警察官も、同じ目線で仕事をしていた。細かい打ちあわせもなく、上からの指示がなくとも、あの悲しみの詰まった現場に立った瞬間から、各々の職業意識を越えて、皆の心は一つになっていた。

 

 

長い髪の毛に顔の片側部分の皮だけがついている離断遺体があった。看護婦は髪を洗い、櫛でとかし、顔の皮膚を裏側から手を添え、ガーゼを用いて和紙に付着した汚れでも落とすようにそっと拭く。強く拭くと表皮が破れてしまうからだ。ファンデーションで化粧をほどこし、三分の一ほど残っている口唇にも薄く紅をさした。
脱出してまったくなくなった頭部、顔面を医師が紙や綿をつめて復顔すると、片方のまゆ毛、眼、それに耳介がはっきりと現れた。看護婦がその部分をていねいに包帯で包む。
二十代後半の女性であった。
同じ年ごろの子どもでもいるのだろうか、ほとんど完全体の、二歳くらいの女の子の身体をやさしく丹念に拭いてやっていた看護婦が、突然子どもを抱きかかえ、その顔に頬ずりをし、やさしく何度も背中をさすっている。
「ありがとうございます。そんなにまでしていただいて……」
看護婦の仕草を見ていた遺族の一人(女性)があふれる涙をそのままに、その看護婦に向かって、深く頭を下げ、その場を離れていった。

 

最後の瞬間まであきらめずに、それぞれの任務を冷静に遂行した高浜機長以下乗務員の行動にこそ私は真のプロの姿を見せられた思いである。それははっきりとボイスレコーダーに残されている。
とくにスチュワーデスの最後の機内放送「……もうすぐ……赤ちゃん連れの方は座席の背に頭を支えて……ベルトはしていますか。テーブルは戻してありますか……」等、機体が急峻な山中に突っこむ寸前まで乗客に生きる希望をもたせる見事な放送をしている。
スチュワーデス自身、恐怖感で心臓が引き裂かれるような思いであったろうに……。

(仙谷看護婦長)

 

www.youtube.com

 

藤岡市のボランティアグループや婦人会のメンバーが「ご苦労さまです」と、差しだしてくれる冷たいおしぼりや麦茶が何ともありがたい。

 

あの麦茶と「ご苦労さま」というやさしいことばに救われた、と誰もがいう。

 

ボランティアの人たちに心を癒されたのは医師、看護婦、警察官だけではない。
夫に死なれた妻、息子夫婦と孫に死なれた老夫婦らの涙の訴え、心情を何時間もの間、ともに泣きながら聞いてやっている。これも会場の隅でよく見られた光景である。
日航職員も、苦しい心境を打ち明けられるのは、婦人会やボランティアグループの人たちだけであったのだろう。
「ご遺族のために一生懸命、誠心誠意やっていることがまだ理解されない」とか、
「遺族に罵られ、胸ぐらを摑まれ、ツバを吐きつけられた……」
など、泣きながら、どうにもならない悔しさを打ち明けている。

 

「先ほどは失礼しました」
憤然として席を立ってから、五〜六分して、M・Iさんが戻ってきた。
「指輪は見つからなくても、あなたは警察を辞めないでください。女房に『あれだけ誠意をもってやってくれている人を歩めさせたら、娘に叱られます。娘は喜びません。すぐにそういって来てください」といわれて来ました。私もつい興奮して失礼なことをいってしまいましたが、女房にいわれたとおりです」という。
M・Iさんご夫妻の温かく、思いやり深い心に触れて、私の体中は感動で熱くなった。
新たな涙がこらえようもなく出てくる。

 

▶死闘を終えて

わけもなく涙があふれ出る。
それは感動の涙ではなかった。この時の私の体は、燃焼しつくした後に襲ってくるある種の虚脱感に覆われていた。
我慢と忍耐の、長くつらい作業もようやく終了した。
「これで終わったんだ」という空虚な涙であった。

 

▶ある乗客の遺書

マリコ、津慶、知代子どうか仲良くがんばってママを助けて下さい
パパは本当に残念だ
ママ、こんな事になろうとは残念だ
さようなら、子供達のことをよろしくたのむ
今六時半だ。飛行機はまわりながら急速に降下中だ
本当に今まで幸せな人生だったと感謝している

 

www.tokyo-np.co.jp

 

jal123.blog99.fc2.com

 

▶リーダー論

必要な意見は勇気をもって上申し、また思いきりぶつかりあうことも大事を成し遂げる上には重要なことであり、現場のリーダーとしての責任である、と痛感した。

 

トップに信頼され、責任と権限を与えられることによって現場には自ずと「俺がやらずに誰がやる」という運命共同体的な精神すなわち、やる気が湧いてくるものである。

 

▶ほか

  • 米と鶏肉が食べられなくなった人も。
  • 遺体引き渡し手続きなどで現場と本庁がピリつく。
  • 日本と海外の宗教観の違い。
  • 霊魂のもたらした(?)不思議現象。

 

<その他リンク>

toyokeizai.net

 

gendai.ismedia.jp

 

www.huffingtonpost.jp

 

www.jal.com

https://www.mlit.go.jp/jtsb/kaisetsu/nikkou123-kaisetsu.pdf

 

www.nikkei.com

 

www.youtube.com

 

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www.youtube.com