【概要】
著者(監督):今村夏子
技術士二次の帰りに一気読み。初今村夏子。読みやすい。アヤシイ宗教や一家のボンビー描写があまりにも自然に練りこまれている。くっついて温め合いながら見上げた流星。良くも悪くも家族の絆からは逃れられないのかも。
学生時代のあるある、奇妙ながらもありそうな信者の行動のリアリティ、自然でテンポのよい会話が印象的だった。アシマナさん主演の映画も気になってきたかも。
【詳細】
<メモ>
なべちゃん「だまされてるの?」
新村くん「おれてっきりかっぱかなにかだと思った」
南先生「いいな、学校は学びにくるところだ。ラクガキしにくるところでも宗教の勧誘をするところでもない。わかったな。これ以上仲間を巻きこむなよ。日直。号令」
学校での生活や親戚との会話の中で自分たちの異常性をいやでも意識させられる中、合宿へ。もう家族に会えないかもと不安になるも、姉と違って良くも悪くも切れない家族の絆。父母の体温を感じながら、「わたしたち親子は、その夜、いつまでも星空を眺めつづけた」。
あるあるシリーズ:
- 途中やめの十年日記⇒社会科のノート
- 十二枚の似顔絵⇒勉強メモ用紙
さりげなく、しかし確実に進むボンビー化がなかなか切ない。
例)⇒マフラーない、法要のごちそうに期待しすぎ、修学旅行の費用を叔父さんに出してもらう
アヤシイ宗教団体の描写が堂に入っている。
「なるほど。こういうことですか」
「巡っていくのがわかるでしょう」
「わかります」
他にも、あやしげな水で湿らせたタオルで体を拭くとか、集会や研修施設でのイベントとか、法要で親戚からつまはじきにされるとか。
そして叔父の奸計。「それ金星のめぐみじゃありませんよ」。
口の中に残るドーナツの甘さだけが本物だったとか、白いTシャツがめくれて見えた南先生のお腹が中学のダントツの思い出だとか、ひたすら授業中に先生の横顔を描いていたとか、ささやかながらも印象的な出来事の数々。