【概要】
著者(監督):坂上秋成
KeyのKey跡を振り返る。各作品それ自体はもとより、雑誌やインタビューなどの媒体から抽出した情報をもとに種々の考察を加えていく。
「過酷な運命」や「奇跡」がプレイヤーの脳裏に刻むもの、その一つの答えを知りたくはないか? 各作品のあらすじ付きなのでハンドブックとして活用されたい。
【詳細】
<目次>
- 第1章 Key前史―『MOON.』と『ONE~輝く季節へ~』をめぐって
- 第2章 Key始動―『Kanon』という奇跡
- 第3章 『AIR』―彼女が選んだ幸福の形
- 第4章 奇跡の価値は―『CLANNAD』、『智代アフター~It’s a Wonderful Life~』
- 第5章 『リトルバスターズ!』―虚構の楽園とピエロたち
- 第6章 Keyとアニメーション―京都アニメーションの美学、『Angel Beats!』、『Charlotte』
- 第7章 『Rewrite』―進化への意志を示すもの
- 第8章 Keyの音楽―物語と音の結びつき
- 終章 Keyが目指した場所―「過酷な日々」の果てにあるもの
<メモ>
Keyは1998年に株式会社ビジュアルアーツ内のブランドとして立ち上げられた後、『Kanon』『AIR』『CLANNAD』『リトルバスターズ!』といった、多くのビジュアルノベルを制作し、ブランドとしての地位を確立していった。それが可能となった背景には、さまざまな要因がある。
- シナリオライターである麻枝准が描き出す、現実と幻想とが溶け合うような物語。
- 原画家・樋上いたるの生み出す強烈な個性を持ったキャラクター。
- 同じく原画家であるNa-Gaの描くシャープで力強い登場人物。
- 音楽担当である折戸伸治と麻枝准の楽曲に対する強いこだわり。
- 代表である馬場隆博の、どれだけ時間がかかってもよい作品ができるまで待つというクオリティに対する考え。
- そして、文章と絵と音楽と演出を同時に楽しむことができるビジュアルノベルというジャンルの中で、「泣きゲー」の元祖と称されるほど、ユーザーを感動させることにこだわった姿勢。
これら全てが結びつくことでKeyというブランドのイメージは作られ、多くの人に記憶される名作を生み出していった。
麻枝はシナリオライターとしてある作品が持つテーマを的確に把握し、その上でそれに合った曲と詞を用意して重要な場面に配置することで、ユーザーの感情をコントロールする。
これは、音楽とシナリオの両方をこなせる人間が現場の中心にいるからこそ可能になるやり方である。そうであるがゆえに、理屈を分かっていても他のブランドは容易に真似できないし、いまだに多くのファンがKeyの音楽に熱狂し続けているのだと言える。
圧倒的な執念と、他人の言を聞き入れる柔軟性。麻枝のそうした性格、あるいは作品のクオリティを何がなんでも上げようとするこだわりこそが、Keyを支えてきたことは間違いない。
鍵作品のストーリーの一般的な解釈が内容確認に役立つかも。
やっぱり『AIR』と『CLANNAD』『リトバス』の記述に熱意を感じる。
タイムリーだけどゲームだけじゃなくて京アニの話に触れているのもいいね。
ゲームブックの影響や村上春樹(『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』)の影響、ビジュアルノベルやインターネット・PC黎明期のアングラな活気も感じられてよい。
(AIR)※太字は主による
だが、国崎往人が観鈴の幸福を祈り、その転生体としての「そら」が観鈴に勇気を与え、さらには晴子が観鈴にとっての本当の「母」になったからこそ、観鈴は幸福を感じることができた。いわば、本来は孤独にしか生きられなかったはずの観鈴に、周囲の人間が繋いできたバトンが手渡されることで、神奈を救うための条件が満たされたのだ。それは、柳也と裏葉が千年前に抱いた願いでもある。
だからこそ、バトンを持って走り続けた彼女が最後に「ゴールっ…」と言葉を紡いだことには重大な意味がある。これまでに呪いを受けた人々が孤独なマラソンを行っていたのに対し、観鈴だけが周囲の人間からバトンを受け取るリレーのような生を送ることで、全ての幸福が詰め込まれた夏を手に入れられたのだ。
物語の結末が死に終わったとしても、長い歴史の果てに人々の願いを叶え、自身の幸福を実感することのできた観鈴の生が悲しいものだったと断ずることなどできはしない。
(CLANNAD)
「ここでKeyが真に描き出したのは、いかなる条件の下であろうと、懸命に生きた人間は自分の生を祝福する権利を失うことはないという倫理である」
(リトバス)
「代理の父や母が存在する中で未熟な子供が「成長」する様を見守っていくような疑似家族の物語として『リトバス』は作られている」
<動画リンク>
P.A.Worksといえばこれだろ。