サム・ジーヴァ帝国図書館(Javaさんのお部屋)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

王維詩集

王維詩集 (岩波文庫)

【概要】
著者(監督):王維 選訳:小川環樹都留春雄、入谷仙助

李白杜甫ときたら王維でしょ。自然派で格調高く華やかだが、寂しさもたまにのぞかせる。浮沈の激しい波瀾万丈な彼の人生がそうさせたのか。「眇(はるか)に惆悵して君を思う」系のはジ~ンとくるよね。

「贈従弟司庫員外絿」「九月九日憶山東兄弟」「終南別業」「華子岡」「柳浪」あたりが好きかも。


【詳細】
<メモ>

「送友人歸山歌二首」

眇に惆悵して君を想う

 

「和使君五郎西樓望遠思歸」

故郷見る可からず

雲外 空しく一の如し

 

 

「贈従弟司庫員外絿」

人に出づるの智無きに苦しむ

 

流年 一に何んぞ駛き

 

 

「酌酒興裵廸」

酒を酌んで君に与う 君自ずから寛うせよ

人情の翻覆 波瀾に似たり

白首の相知も猶お剣を按じ

朱門の先達 弾冠を笑う

草色 全く細雨を経て湿おい

花枝 動かんと欲して春風寒し

世事は浮雲 何んぞ問うに足らん

如かず 高臥し且つ餐を加えんには

 

「九月九日憶山東兄弟」

独り異郷に在りて異客と為る

佳節に逢う毎に倍々親を思う

遙かに知る 兄弟高きに登る処

遍く茱萸を插して一人を少かん

 

「終南別業」

中歳 頗ぶる道を好む

晩に家す 南山の陲

興来たって毎に独り往く

勝事 空しく自ずから知る

行きて水の窮まる処に到る

坐ろに看る 雲の起る時

偶然 林叟に値い

談笑 還期無し

 

「華子岡」

飛鳥 去って窮まらず

連山復た秋色

華子岡を上下すれば

惆悵して情何んぞ極まらん

 

「柳浪」

行分かれて綺樹接す

倒影 清漪に入る

学ばず 御溝の上り

春風に別離を傷むことを

 

「早秋山中作」

山裏の蟬声 薄暮に悲し

 

「田園樂七種」

桃は紅にして復た宿雨を含む

柳は緑にして更に春煙を帯ぶ

花落ちて家僮末まだ掃わず

鶯啼いて 山客猶お眠る

 

「送別」

馬を下りて君に酒を飲ましむ

君に問う 何にか之く所ぞ

君は言う 意を得ず

帰臥す 南山の陲

但だ去れ復た問う莫れ

白雲 尽くる時無し

 

「齊州送祖三」

相い逢いて方に一笑し

相い送りて還た涙を成す

祖長 已に離るるを傷み

荒城 復た入るを愁う

天寒うして遠山浄く

日暮れて長河急なり

纜を解けば君已に遙かなれど

君を望みて猶お佇立せり

 

 

「送楊長史赴果州」

別後 明月を同じゅうす

君応に子規を聴くべし

 

「送元二使安西」

渭城の朝雨 軽塵を浥し

客舎青々 柳色新たなり

君に勧む 更に尽くせ一杯の酒

西のかた陽関を出づれば 故人無からん

 

「哭殷遙二首」

人生 能く幾何ぞ

畢竟 無形に帰す

君を念えば 為に死するに等しく

万事 人情を傷ましむ

慈母 未だ葬るに及ばず

一女 纔に十齢なり

泱漭として 郊外寒く

蕭条として 哭声を聞く

浮雲 為に蒼茫

飛鳥 鳴く能わず

行人 何ぞ寂莫たる

白日 自から凄清たり

憶う 君の在りし時

我に無生を学ぶを問う

君に勧むるに苦だ早からず

君をして成る所 無からし

故人各々贈有り

又た平生に及ばず

爾に負く 一途に非ず

痛哭 柴荊に返る

 

<総評>

王維は複雑な詩人である。未来をはらむ新興士族階級の持つ現実性は、自然詩の中にこれまでにない新しいリアリティーと美しさをたらし、社会の矛盾を痛烈に摘発し、送別の詩を中心とする友情の詩に真実の声をあげさせた。彼の貴族的な教養と生活環境とは、彼の詩に豊満華麗な味いを与えたとともに、どこか弱々しさ、古い貴族制度とはきっぱりと無縁であった李白杜甫に見られない弱々しさをたらしたこともいなめない。そうして、士族と貴族との双方の中間をさまよって、どちらにはっきりした態度を取れなかった政治姿勢は、仏教信仰と結びついて、現実を逃避し、観念の世界に美を築こうとする傾向を作りだした。これら諸要素が渾然一体となって、独特の美的宇宙を形成している所に、彼の真価が存する。