【概要】
著者(監督):広中平祐
特異点解消のフィールズ賞でおなじみ。著者が半生を振り返り、出逢った人々、学問や創造の喜び、数学上の発見などについて語る。人生の転機がいくつもあり、著者が数学者として成長していくドラマとも読める。
著者のように鈍、運、根の三点を見習って生きていきたい。
【詳細】
「まずは自分で考えてみること」が学問の基本的な態度。
父と母、友人、恩師、少女に出会い、人間的・数学者的に成長していく。
著者の半生記たる本編はもちろんのこと、特異点解消の例えである高速道路の交差点(特異点の解消)、米国人の耳学問文化は興味深い。
終盤の80's日本への警鐘は耳が痛い。
<引用>
私は、学問は愉しいもの、喜びを味わうものだと語りたい。
創造することの愉しさ、喜び――それは、おそらく自己の中に眠っていた、まったく気づかなかった才能、資質を掘り当てる喜び、自分という人間をより深く認識理解する喜びではないか、と思う。
私は、今もそうだが、常に身近なところに尊敬できる人物をさがし求め、その人から何かを学びとろうとしてきた。
私はその時から今日まで、ねばり強く努力する姿勢、根気を意識して自分に植えつけてきたつもりだ。そして現在では、このことにかけては誰にも負けないと自負できるようになった。
「努力」とは私においては、人以上に時間をかけることと同義なのである。
私は、自分にないものをもっている友、自分に教えてくれるものをもっている友を意識して選び、つき合ってきたのだ。そして、そのためにはどんなに親しくなっても友との間に一定の距離を置き、自分の中の小さな世界に友が入り込んで来ようとしてきた時には、厳しくこれをはねつけなければならない。そう努めてきたのである。
本を読み、高度の理論を理解する、人の論文を明晰に批評する、それだけでは「おじさん」の値打ちはないのである。自分の理論を創造しなければならない。論文を書かねばならない、いかに拙くとも……。
<その他>
- 数学の特徴:技術性、思想性、抽象性、国際性
- 研究・生活態度:事実を事実としてとらえること、仮説(目標)を立てること、事象を分析すること、それでも行き詰まった時は大局を観ること
- Sleep with problem
- You need strong teeth to bite in.