著者(監督):黒澤明
【概要】
原節子の代表作。お嬢様が「自由の裏には苦しい犠牲と責任がある」ことを知る。ピアノしか弾いたことのなかったような指で鍬を握るシーンが印象的。
1946年という時節柄もあってか、新時代の女や生き方を見せつけられた思いだ。
【詳細】
<あらすじ>
吉田山ピクニックからスタート。
そう、彼らは京都帝国大学の学徒たち。
やがてS8,13,16年と時は流れ、思想弾壓の嵐が。
自由闊達さは失われ、窮屈な世の中に。
そんな中「身も心も何もかも投げ出す仕事がしたい」とキラキラを求める節子。
東京での自活はたいへんだった。
「自由の裏には苦しい犠牲と責任がある」
そんな父の言葉を思い出す。
いろいろあってかつての学徒・野毛さんと同棲スタート。
と思いきや検挙、保釈、獄死、埋葬。
野毛さんの実家に遺骨を届け、座り込む。
妻の意地を見せ、鬼気迫る表情で鍬を握る。
ピアノや花くらいしか触れたことのないような手で。
戦争は終わり、「農村文化運動の輝ける指導者」と化した節子。
「顧みて悔いのない生活」とは何だろうか? 道を誤ったのは誰だろうか?
新時代の女、新時代の生き方を新時代の女や生き方を見せつけられた思いだ。
象牙の塔を出て悟ったパパ先生のスピーチで〆。
<印象>
・今も残る京大アーティファクトが興味深い。
Ex.)時計台、法経の建物、正門、吉田山
・原節子はやっぱり大柄(165cm)。
帽子をいじり、くるくる回り、追いかけっこし、河をわたり、スキップする。
原節子のあやしいセリフが面白い。
Ex.)「はやく、ね、ね」「あたしそれが欲しいんです」
・ピアノしか弾いたことのなかったような指で鍬を握るシーンが印象的。あとは水盆に惰性で回る三輪の花か。