Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

日本語を味わう名詩入門5 立原道造


著者:立原道造 編:萩原昌好 

【概要】
夭折詩人のソネット(四行詩)集。やわらかな光と風、追憶と寂寥。儚く美しい夢幻世界を体験できる。ものうくみえるが希望はある。収録数が少ないので岩波文庫版もぜひ読みたい。

【詳細】
4・4・3・3行のソネットが主。
有限の形式が無限(夢幻)の追憶と優しい光を連れてくる。
MICHIZOUの没年24を越えてしまった。彼のうたを携え人生を歩んでいきたい。

『村の詩 朝・昼・夕』

郵便配達がやって来る
ポオルは咳をしている
ピルジニイは花を摘んでます
きっと大きな花束になるでしょう
この景色は僕の手箱にしまいましょう


『わかれる昼に』

何もみな うっとりと今は親切にしてくれる
追憶よりも淡く すこしもちがわない静かさで
単調な 浮雲と風のもつれあいも
きのうの私のうたっていたままに


『のちのおもいに』

夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもい
忘れつくしたことさえ 忘れてしまったときには

夢は 真冬の追憶のうちに凍るであろう
そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
星くずにてらされた道を過ぎ去るであろう


『Ⅵ 朝に』

傷ついた 僕の心から
棘を抜いてくれたのは おまえの心の
あどけない ほほえみだ そして
他愛もない おまえの心の おしゃべりだ


『晩秋』

すくなかったいくつもの風景たちが
おまえの歩みを ささえるであろう
おまえは そして 自分を護りながら泣くであろう


『Ⅹ 夢みたものは……』

夢みたものは ひとつの幸福
ねがったものは ひとつの愛
山なみのあちらにも しずかな村がある
明るい日曜日の 青い空がある


『歌ひとつ』

昔の時よ 私をうたわせるな
慰めにみちた 悔恨よ
追憶に飾られた 物語よ
もう 私を そうっとしておくれ


『草に寝て 六月の或る日曜日に

私たちの 心は あたたかだった
山は 優しく 陽にてらされていた
希望と夢と 小鳥と花と 私たちの友だちだった