著者(監督):伊丹十三
【概要】
突如訪れた義父の死。あたふたしながらお葬式が進行していくさまを描いた悲喜劇。
手続き化された形式をなぞることが死の受容につながるのかもしれない。(参考『死者を弔うということ』)
【詳細】
<あらすじ>
'84映画。
・第一日<死>
ナレーションあり。
山荘に棲む老夫婦。
いっぽう、都会に住む監督と女優の中年夫婦。
女房の父、急死。
棺や寿司の用意をあわてて行い、
子供とニャン吉を連れ、しのつく雨のなか病院へ。
親戚集合。あるあるな悲喜劇が展開する。
おそるおそる額に触るあたりは妙なリアリティがある。
ボケる故人兄に「いや、そうじゃなくて」に総ツッコミ。やがてガン無視。
息つく間もなく出棺。
雨中階段昇り、北枕議論、遺影選び、戒名料の相場、宗派、しきたり(お茶、饅頭、お布施の額)などやること・考えることがいろいろある。
線香を絶やさぬように怒涛の1日はとりあえず終了。
・第二日<情事と通夜>
般若心経が響く中、つめとぎするニャン吉。走り回る子供。
ビデオでお悔み口上を学習する夫妻。ワキ処理が甘い。
バッハをBGMに白黒ホームビデオの断章(談笑)が挿入される。
ご主人、弁当を注文すると情婦とキッス。
セミの声が響く中、夏山で発情。ヤる。こちらもワキ処理が甘い。
いっぽうブランコを無表情で漕ぐ妻がシュール。
スッキリしたところで笠智衆の読経タイム。
正座がつらい皆々様。
遊ぶ子供、鳴る電話。
お礼ついでに住職にタイルをあげちゃう。
お通夜は故人を囲んでの酒盛り。
愚痴る人、話長い人、寝るジイサン。
オッサン連中の酒盛りとかいがいしく動く女の対比が情けない。
なんとか外野を帰らせると残る身内で愚痴を言い合う。
〆は故人の好きだった島倉千代子を合唱。そして合掌。
・第三日<出棺・火葬>
花を入れ、釘を打ち、死出の準備を進める。
棺を囲む親戚の写真を撮るオッさん、風に舞う紙幣、黒と金に彩られた霊柩車。
故人兄のオッさん、出棺の口上だけはうまいのがニクい。
火葬場で焼き鑑賞、焼き談義。
ババのあいさつは彼女にしか云えない言葉だった。
故人の遺品を燃やしてEND。
<印象>
- どんなときにも笑いはある。畢竟、人生は悲喜劇なのだろうか。観客も葬式に出ている感じがあってよかった。
- 定型文やしきたり・慣習は、死を受け入れる手続きなのかもしれない。
- ドライビング・サンドイッチ受け渡し、葬儀委員長が着服するシーンに笑った。