Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

ウニはすごい バッタもすごい


著者(監督):本川達雄

【概要】
サンゴ、昆虫、ウニ・ヒトデ、貝、ナマコなどの生態とそれに適した身体のつくりをかじれる。
生物学だけでなく、力学、生化学、流体力学など様々な学問分野の視点が導入される。自然が開発したサイエンスとエンジニアリングの美しき統合の神秘に「よくできてんなあ」としみじみ思う。彼らの肉体改造への飽くなき意志を感じざるを得ない。
著者自身が作詞作曲した歌はもはや定番である。

【詳細】
知ってか知らずか肉体改造に勤しんできた生物たち。
機械のごとく精緻な身体システムの工学的デザインの妙に賛嘆せよ。
昆虫と被子植物の共生・共進化、高機能材料クチクラ・繊維強化複合材料コラーゲン、筋肉・骨格のバイオメカニクス、エネルギー供給と消費、イオン・酸素の拡散速度・浸透圧、滑走路仮説、キャッチ結合組織、ベルヌーイの定理の応用、元素の循環…。
種々の学問分野を学際的に繋ぎ合わせる手腕は見習いたい。

昆虫は二段階のステップを踏んで大成功への道を歩んでいった。まず乾燥しにくい体をもつことにより陸を制覇した。これが可能になったのは、体を乾燥から守ってくれるクチクラの外骨格をもったためである。次に羽を生やして空を制覇した。これができたのもクチクラの外骨格のおかげである。昆虫の大成功は、ひとえにクチクラというきわめて優れた材料の開発にかかっていたと言っていい。

棘皮動物はやはり扱いが別格。
さかんに動く動物と、まったく動かない動物との間で、ちょっとだけ動く生活をしているのが棘皮動物である。ちょっとだけ動ければ、どちらの動物も手に入れることができなかった餌を独占できる。いわば「隙間産業」で身を立てているのが棘皮動物。他と競い合うことなく、平和裏に天国の暮らしを実現してしまったのが彼らであり、それも「小さな骨片がキャッチ結合組織でつづり合わされた」類い希な支持系を開発したおかげだった。
これまでの書籍でもおなじみだが、
円筒形の原型構造から演繹的に進化系を導いたり、サンゴのすばらしさと危機を説いたり(『生物多様性』)、スケールの大小が与える工学的な影響にも言及する。
陸で成功した二大動物群の一方である昆虫は小さいサイズで成功し、もう一方の四肢動物は大きいサイズで成功したのだった。

そして比喩。
例)
「日当り良好で紫外線カットのサンルーフ付きの、安全なマンション」に住む褐虫藻
「広大なお菓子の家を独占」しているナマコ。