Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

サイコパス


著者(監督):中野信子

【概要】
サイコパスに関する、脳科学や社会科学、犯罪心理学などの研究結果のレビュー集とみてよい。
サイコパス研究の歴史、サイコパス的傾向と人類の進化の関わりなど、自然科学と心のぎくしゃくした関係が興味深い。
ブラック企業経営者、炎上ブロガー、オタサーの姫などの卑近な例が、本書の敷居を下げるのに貢献している。

【詳細】
100人に一人はサイコパスらしい。
あるいは、この本をいま読んでいるあなた自身が、サイコパスかもしれません。
もはやホラー。

自閉症スペクトラムと同様、人はみな多かれ少なかれサイコパス的要素を持っている。
それが許容範囲を超えると、サイコパス認定される。

異様なまでの冷静さと、殺人鬼と好青年の間を平然と往き来できることこそ、サイコパスの特徴です。

猟奇的殺人鬼のサイコパス事件簿を紹介し恐怖を煽った後、
脳科学神経科学の発展により、これまでは心の分野であったものを定性的・定量的に分析できるようになってきたことを種々の研究をレビューしつつ印象づける。
身体的特徴としては、心拍数の低さ、顔のアスペクト比(男:横長ほどあやしい)、扁桃体その他脳機能の活動の低さを、
心理的特徴としては、人間心理の操縦に長けていることや道徳心の欠如などを挙げる。
(科学は心に到達できるのか? 西洋vs.東洋、部分vs.全体、など永遠のテーマを喚起する。)

そのあとはまた話の風向きが変わり、
サイコパス研究の歴史、サイコパス的傾向と人類の進化の関わりに関し紙面を割く。
英雄や独裁者、天才(+ブラック企業経営者、炎上ブロガー、オタサーの姫)などが人類社会の必要悪にして発展の原動力になったのかも…。
多少のフリーライダーに寄生されても揺るがないほどの盤石な社会基盤を、人類は持ちえた。だからこそ、サイコパスも淘汰されずに生き残ってこられた。そして、時には人類社会の大きな発展にサイコパスが寄与した……という考え方もできるでしょう。

他にも、遺伝と環境、いまを生きるサイコパス部族の話が面白い。