評価:B+
【概要】
サッティーヤ道場の門人に宛てたストイックな戒律集。大いなるものへの献身と融和、不撓の決意など、汎宗教的な人間の本質をひたむきに追い求めている。解説はガンちゃんの簡易な伝記も兼ねておりお得感。
【詳細】
「生きとし生けるすべてのものを己の生命のごとくに愛」し献身する「アヒンサー」を筆頭に、ガンディーのサッティーヤグラハ・アーシュラムでは、無所有、無畏、寛容、謙虚などの徳目を戒律とし、誓いをたてる。
誓いをたてるというのは、弱さの証拠ではなく、強さの証拠です。なすべきことを、なにがなんでも遂行する――これが誓願です。
ヒンドゥー教の『バガヴァッド・ギーター』やジャイナ教、仏教、インド哲学のエッセンス(輪廻と解脱、アートマンとブラフマン、二と一)と、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教に底流する精神性。
大いなるものへの献身と融和、不撓の決意など、汎宗教的な人間の本質をひたむきに追い求めている。
わたしはそれぞれの聖典を尊敬のこころをもって読み、どの聖典にも同じ基本的な精神性を見出したのでした。
真摯な努力を重ねていけば、一見異なる真実に見えるものが、結局は、同じ樹に繁茂する見かけの違った無数の木の葉のようなものであることがわかるでしょう。
「自分に理解できないことはみな誤りにちがいないときめつけるのは早計である」
「なにかを批評するにさいしても、謙遜と礼節をもって意見を述べるならば、後味の悪さを残すこともありません」など、真摯でひたむきな人柄がしのばれる。
ガン爺、めっちゃストイックやんと思わせての、
彼を知る多くの人々の心に焼き付いていたマハートマの印象は、厳格さよりもむしろ愛やさしさ、明るさであり、人間としての懐の深さと大きさであった。とりわけ、彼の巧まぬユーモア(だじゃれも含めて)のセンスについては、異口同音にたのしい思い出が語られ、「バーブー(オトン)のまわりには、つねに明るい笑いと、陽気な雰囲気がありました」と彼らは語った。いいじゃん。人間味がある。
巻末では、宗教者と政治家の二面性を持ったガンディーの生涯が簡潔に語られる。
二度の挫折と不退転の決意。あがり症だったことや西欧の熱病にうかされていた時代があったことは、意外性があって興味深い。
著者が現地に行っているのも迫力を出すには〇。