評価:B
【概要】
【詳細】
1770年・フランス。
公武〇体よろしく、フランス・ブルボン家にオーストリア・ハプスブルグ家の令嬢が嫁いできた。
V宮殿監修とのことばにもあるように、極力思い込みを排し事実を尊重する姿勢。宮殿の床や柱、壁の装飾、部屋の調度、服装へ込められた気迫、そして参考文献の数を見よ。
愚鈍そうなルイXVIのイメージがインテリノッポに変わる。
「この扉の向こうはフランス」
というわけでやってきましたおフランス。
14の胸に抱いた寂しさと不安は、新生活の空疎と単調に塗りこめられる。
気難しそうな夫、くだらない有職故実や形式にこだわる人々、姑小姑との悪口大会、開かれた閉鎖空間の窮屈さ。
そんな彼女の思いの丈をオカンへの手紙形式で書き殴っていくスタイル。
おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。
というわけで、基本的には夫・次期XVIとの心のふれあいがメイン。
寝室での衝突、樹下での和解、夫婦でのヴォー様dis、ダンス、陛下⇒オーギューストへの進展その他を経てだんだん居場所を見つけていく二人。
そして冒頭で描かれた、離宮での団欒に至る。
ここにはしかし、荒れ狂う時代の波は彼等を断頭台に送り込んでしまうわけですな。かなしい。
くだらないしきたりや
上辺だけの人間関係など存在しない
穏やかに流れる時間
ここには 私の望んだものが全てある
そう
あの孤独と不安で胸が押し潰されそうだった
あの頃の小さな私の―――
1770~1793までを殆ど描かなかったのは少し物足りないが、正解かもしれない。かなしいもの。