評価:B+
【評】
鏡花強化月間。
『高野聖』、語り物で読みにくいけど、妖しい官能美に溢れていて面白い。
売薬を追って入ったけもの道。
蛇が闊歩し蛭が降る、日が傾けば茅蜩が鳴く。
不図見えたは一見の山家。
優しい中に強みのある、気軽に見えても何処かに落着のある、馴々しくて犯し易からぬ品の可い、如何なることにもいざとなれば驚くに足らぬという身に応のあるといった風の婦人
傷つき疲れた体を丹念に流され、この世のものならぬ美しさ優しさに感激する若僧。
その一段の婦人の姿が月を浴びて、薄い煙に包まれながら向こう岸のしぶきに濡れて黒い、滑らかな大きな石へ蒼味を帯びて透通って映るように見えた。
金釵玉簪をかざし、蝶衣を纏うて、珠履を穿たば、正に驪山に入って、相抱くべき豊肥妖艶の人が、その男に対する取廻しの優しさ、隔なさ、深切さに、人事ながら嬉しくて、思わず涙が流れたのじゃ。あぁ。。。これゎもう。。。
その手と手を取交すには及ばずとも、傍につき添って、朝夕の話対手、蕈の汁で御膳を食べたり、私が榾を焚いて、婦人が鍋をかけて、私が木の実を拾って、婦人が皮を剥いて、それから障子の内と外で、話をしたり、笑ったり、それから谷川に二人して、その時の婦人が裸体になって私が背中に呼吸が通って、微妙な薫の花びらに暖に包まれたら、そのまま命が失せても可い!
この続きはキミの眼で確かめろ!