Javaさんのお部屋・改

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

風土

著者:和辻哲郎
評価:B+

【評】
旅行体験、逸話、文学作品、思想書など縦横に例を引き、
気候の類型を挙げ、風土と人間の相互作用をときぐほぐそうと試みる。

春風は花を散らす風でありあるいは子供を海に嬉戯せしめる暑さである。我々は花を散らす風において歓びあるいは傷むところの我々自身を見いだすごとく、ひでりのころに樹木を直射する日光において心萎える我々自身を了解する。すなわち我々は「風土」において我々自身を、間柄としての我々自身を、見いだすのである。

我々は具体的な人間の存在の仕方を、すなわちその特殊性における存在を、把捉するために、存在的な認識、すなわち歴史的・風土的な現象の直接的な理解に向わなくてはならぬ。しかしそれが歴史的・風土的現象を単に客観的対象としてのみ取り扱うのならば、上来説き来たったごとき風土の意義は全然把捉せられないであろう。

風土の限定が諸国民をしてそれぞれに異なった方面に長所を持たしめたとすれば、ちょうどその点において我々はまた己の短所を自覚せしめられ、互いに相学び得るに至のである。またかくすることによって我々は風土的限定を越えて己を育てて行くこともできるであろう。

<モンスーン>
一般にモンスーン域の人間の構造を受容的・忍従的として把捉することができる。この構造を示すものが「湿潤」である。
特に暑熱と湿気とを条件とする種々の草木が、この時期に生い、育ち、成熟する。大地は至るところ植物的なる「生」を現わし、従って動物的なる生をも繁栄させるのである。かくして人間の世界、植物的・動物的なる生の充満し横溢せる場所となる。自然は死でなくして生である。死はむしろ人の側にある。だから人と世界とのかかわりは対抗的ではなくして受容的である。


<沙漠>
乾燥の生活は「渇き」である。(略)
人と世界の統一的なるかかわりがここではあくまでも対抗的・戦闘的関係として存する。人が自然において見るところのおのれは死である。死を見ることによって人は生を自覚する。すべての「生産」は人の側にあり、従って外なる自然の生産を「恵み」として待ち望むことはできぬ。

人間は自然の恵みを待つのではなく、能動的に自然の内に攻め入って自然からわずかの獲物をもぎ取るのである。かかる自然への対抗は直ちに他の人間世界への対抗と結びつく。自然との戦いの反面は人間との戦いである。

<牧場>
自然の恵みが豊かでないがゆえに、従って自然に忍従して恵みを待つを要しない。とともに自然に対抗して不断に戦闘的な態度を取らなくてはならないほど自然が人を脅やかしもしない。自然は一度人力の下にもたらされさえすれば、適度の看護によって、いつまでも従順に人間に服従している。この自然の従順がまず生産を牧場的たらしめるのである。

自然からの開放は自然との戦いからの解放、従って、人間の活動の激成となった。人間の競争、従って権力欲や遊戯欲による人と人との摩擦、あるいは人間の想像力の挙揚、従って知識欲による理性の発展や創作欲による芸術の産出、それらがこの新しい立場のひき起こした新しい形勢なのである。

西欧の自然の温順は自然に対する人間の「作業知」の開発と引き離すことのできないものである。従順な自然からは比較的容易に法則が見いだされる。そうして法則の発見は自然を一層従順ならしめる。

<モンスーン・日本>
モンスーン的な受容性は日本の人間においてきわめて特殊な形態を取る。第一にそれは熱帯的・寒帯的である。すなわち単に熱帯的な、単調な感情の横溢でもなければ」、また単に寒帯的な、単調な感情の持久性でもなくして、豊富に流れ出でつつ変化において静かに持久する感情である。四季おりおりの季節の変化が著しいように、日本の人間の受容性は調子の早い移り変わりを要求する。

変化の各瞬間に突発性を含みつつ前の感情に規定せられた他の感情に転化するのである。(略)
だからそれはしばしば執拗な闘争を伴わずして社会を全面的に変革するというごとき特殊な歴史的現象をさえ作りだしている。(略)

桜の花をもってこの気質を象徴するのは深い意味においてもきわめて適切である。それは急激に、あわただしく、華やかに咲きそろうが、しかし執拗に咲き続けるのではなくして、同じようにあわただしく、恬淡に散り去るのである。

我々はかかる風土に生まれたという宿命の意義を悟り、それを愛しなくてはならぬ。かかる宿命を持つということはそれ自身「優れたこと」でもなければ「万国に冠」たることでもないが、しかしそれを止揚しつつ生かせることによって他国民のなし得ざる特殊なものを人類の文化に貢献することもできるであろう。そうしてまたそれによって地球上の諸地方がさまざまに特徴を異にするということも初めて意義あることとなるであろう。


和っちゃんの言うことがあっているか知らないが、これにしばられる必要はない。
ただ、知らない土地を旅行したときに、そこの風土と人間の性格を関連付けてみるのは面白いと思うど。