Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

楼蘭

著者:井上靖
評価:B

【評】
愛を語り、子を育み、武を競い、死を嘆き、悠久の時を紡いできた幾千の人びとがおりました。彼らが樹て、暮らした国ぐには或る時は栄え、或る時は衰え、ついにはその悉くが滅びました。さて、最終回となる今回はその一つ、楼蘭について見ていくことにしましょう😊

表題作のほか、『洪水』『異域の人』『補陀落徒渡海記』など古典に取材した作品群を収める。
やはり表題作がベストか。が、『補陀落~』も中島敦に通ずるものがあってよい。

彼女は、匈奴やその他の蛮人達と戦うために出かける楼蘭の守備兵の行進を見、
射手や槍兵達を乗せた戦車を見、楼蘭を通ったり其処の宿屋に泊まったりした大隊商を見、
また支那の高価な絹の梱を「絹の道」を通って西方に運ぶ数知れぬ駱駝を見たに違いない。
そして彼女は確かに恋し、また恋されたに違いない。若しかすると恋の悲しみのために死んだのかも知れない。しかしこれらの事はすべて知る由もないことである。
柩の内側の長さは五呎七吋で、世に知られぬこの女王は、ほぼ五呎二吋の小女である。