著者:澁澤龍彦
評価:B
【評】
人間の文明は、必ずしも幸福の増加を約束しない。
むしろ人間の自由を束縛し、「現実原則」を発達させ、いきいきした快楽をつかもうとする人間本来の欲求を沮喪させる。
古くさい形式的な道徳や、お上品ぶった理想論や、ばかばかしい先入見などを、ひとつひとつ、こっぱみじんに、ぶちこわしていきたいと思う。
「雨ニモ負ケズ」やカント的人格主義、姑息な幸福をこき下ろし、
「性感帯の拡大」により労働と遊びを一致させること、
「自分の死をだれにも譲り渡すまいと堅く決意すること」
が快楽主義の根本原理であるとアジる。
が、巻末の談論では「兄貴、甘いよ」とイジられている。
快楽巨人列伝が面白い。