三木清。
幸福、個性、虚無と実在、肉体と精神…。
幸福、個性、虚無と実在、肉体と精神…。
断章から滲みだす実践的な哲学。
鳥の歌うが如くおのずから外に現われて他の人を幸福にするものが真の幸福である。
人間の実在性を証明しようとする者は虚無の実在性を証明しなければならぬ。あらゆる人間的創造はかようにして虚無の実在性を証明するためのものである。
生命とは虚無を掻き集める力である。それは虚無からの形成力である。
今日の人間の最大の問題は、かように形のないものから如何にして形を作るかということである。(中略)一種芸術的な世界観、しかも観照的でなくて形成的な世界観が支配的になるに至るまでは、現代には救済がないといえるかも知れない。
成功と幸福とを、不成功と不幸とを同一視するようになって以来、人間は真の幸福が何であるかを理解し得なくなった。
娯楽は単に消費的、享受的なものではなく、生産的、創造的なものでなくてはならぬ。
人世は運命であるように、人生は希望である。運命的な存在である人間にとって生きていることは希望を持っていることである。
人生問題の解決の鍵は確実性の新しい基準を発見することにあるように思われる。
愛する者は自己において自己を否定して対象において自己を生かすのである。