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関東大震災

関東大震災 (文春文庫)
関東大震災 (文春文庫) [文庫]
著者:吉村昭
評価:B

九月一日と言えば防災の日。九十年前の帝都が壊滅した日だ。
本書は「地震発生――二十万の死者」「第二の悲劇――人心の錯乱」「復興へ」の三部構成からなる記録文学である。
当時の日記や詳細な数字、被災者の証言を随所にちりばめ、
大正十二年の空気を、そして地震や火災の恐怖を漂わせることに成功している。著者の得意技だ。
東京市や関東の地図を載せてくれるとなおよかった。

被服廠跡で起こった「火災旋風」、地震・火災による人心の錯乱を知り、大いに戦慄した。
地震と言えば、東日本大震災は記憶に新しい。
地震が起こったら、火の元を消して、(ほとんど)何も持たずに高台に逃げよう。

関東大震災東京市における悲劇は、避難者の持ち出した家財によるものであったと断言していい。

流言は、通常些細な事実が不当にふくれ上って口から口に伝わるものだが、関東大震災での朝鮮人来襲説は全く何の事実もなかったという特異な性格をもつ。このことは、当時の官憲の調査によっても確認されているが、大災害によって人々の大半が精神異常をきたしていた結果としか考えられない。

災害地には、多くの遺体が遺棄されていた。焼けた材木のように炭化した焼死体が路上に横たわり、逃げ場を失って集った人々の死体は一カ所に盛り上っていた。
 また河川には、溺死者が漂流物とともに川面を隙間なくおおっていた。それらは、路上の焼死体とは異なって衣服に焼け焦げの痕もなく、体内に発生したガスで一様にふくれ上っていた。
 残暑の厳しい季節であったので、それらのおびただしい死体は、急速に腐敗し始めていた。