機長・副機長の仕事を紹介し、機長はシステムオペレーターだけでなくチームリーダーとしての能力も必要とされることを説明。まさに賢者(愚者は成事に闇く、智者は未萌に見る『戦国策』)。やや説教臭いがリーダー論としても読める。度量とバランスを備えたリーダーをめざしたい。
チェックリストの運用、フールプルーフ、機器やシステムの冗長性(システムより機械部品が故障していることのほうがずっと多い)、事故調査報告書の活用などの内容は、航空業界だけでなくメーカーの人にも役立つ内容なのでは。
記述内容がやや散漫なのでもう少し系統立ててほしい気も。
【詳細】
<仕事論>
- ABC(当たり前のことを、ばかみたいに、ちゃんとやる)
- 最初に原理原則を説明する
- 異常を感じたら、まず口に出す
- 機長はまずタスクの配分をする
- 10秒ルール(会って10秒以内にどんなことでもいいから、とにかく話しかける)
- 機長は話しやすい雰囲気を作り出す必要がある
- 絶対に自分の心の動揺を外部に出さない
- 「自分はまだまだ努力しないといけない」と思っているパイロットは、「自分はうまい」と思っているパイロットより10倍優秀である。
- パイロットは常に一つのことに意識を集中させないように、何かに心を留めないようにしなければならない。(五輪書「常にも、兵法の時にも、少しもかわらずして、心を広く直にして、きつくひっぱらず、少しもたるまず、心のかたよらぬように、心をまん中におきて、心を静かにゆるがせて、そのゆるぎの刹那もゆるぎやまぬように、よくよく吟味すべし」)
- 機長は自分の感情や心理状態をコントロールできなければならない。
- 機長は副操縦士にアドバイスをされたら、第一声は必ず「ありがとう」でなければならない。
- たとえ間違ったアドバイスをして気まずかったり、さらには機長から叱られたりしてもアドバイスを出し続けること。
- 最初に正しい操縦のやり方を教え、それを実行させてみて、できれば大げさに褒める。(やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ [ex. 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず)
<メモ>
- パイロット・航空機うんちく(フューエルヒート、滑走路の水平度、与圧、機長までのキャリア、オイルショックで燃油費が経費の最大項目に)
- AI旅客機にも冷静な視線。その理由は 飛行機の操縦が「すべての情報が与えられない」部分情報問題だから。そして、AIの論理はブラックボックスなので考え違いがあっても人間が指摘できないから。
<誤植>
第一版第一刷 p.193 l.12 捕捉→補足