Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

源氏に愛された女たち

源氏に愛された女たち (集英社文庫)
【概要】
著者(監督):渡辺淳一

失楽園』でおなじみ。六条御息所、夕顔、紫の上、明石の君、そして光源氏といった『源氏』の登場人物をオッさん目線で分析する。曰く、光源氏は女たちの舞台の「狂言回し」で、『源氏』は「女の百科事典」。夕顔に優しく、女三宮に厳しい。


【詳細】
<目次>

  • 一 男と女・この永遠に変らぬ愛と哀しみ
  • 桐壺の更衣・儚なげさで男の愛をひきつける
  • 藤壺(前半)・母の面影をとどめる憧れの人
  • 四 源氏と頭中将・立派すぎる妻をもった夫の苦渋
  • 五 女性論・貴族の男たちが好む女性とは
  • 光源氏・さまざまな女を口説く手練と手管
  • 七 空蝉・愛を拒むことで自らの存在を示す
  • 八 夕顔・簡単に男を受け入れる女の魅力
  • 九 葵の上・素直に自分を表現できない女の悲劇
  • 十 紫の上(前半)・男の愛育によって華ひらく
  • 十一 末摘花・醜女で貧しい女が身につけた武器
  • 十二 源典侍・笑われることを恐れぬ女の強さ
  • 十三 朧月夜・明るさと奔放さで男をリードする
  • 十四 六条御息所・地位と教養の裏に潜む怨念
  • 十五 藤壺(後半)・色や恋を捨てたしかな地位を守る
  • 十六 明石の君・慎ましく控えめにして幸せを得る
  • 十七 紫の上(後半)・深く愛されたが正妻にはなれず
  • 十八 玉鬘・好色な養父に迫られて困惑する
  • 十九 女三の宮・無邪気で素直でしかし加害者
  • 二十 朝顔の君・月並みな女になることを拒否した女
  • 二十一 光源氏・ひとりの女性で満たされぬ男の彷徨
  • あとがき

 

『源氏』のストーリーを追いつつ人物紹介を行う。背景・用語説明、本文の引用もあり『源氏』を読んだ人もそうでない人も楽しめる。花散里は?

 

<源氏>

幸か不幸か、源氏はこの面倒きわまりないマザコン男であった。

かくして世間的にはすべてが恵まれていると思われた源氏の心のなかに、母恋いと父の愛する人への思慕という、二つの怪しく異様な要素を含んだ愛情が、次第に増幅されていく。

 

源氏が魅力的なのは、容姿端麗な貴公子というだけでなく、そうした包容力と男気をかね備えていたからで、紫式部はそのあたりを書きこむことで、源氏が単なる女好きの男ではないことを、訴えたかったのかもしれない。

 

源氏が終生、一人の女性だけに没頭しなかったからこそ、この物語を稀に見る多彩で華麗な物語に昇華させるとともに、男女の愛惜という、きわめて内的な心理的な小説として成功させたともいえる。

 

口説きテク>

男は一度、口説くと決めたら、あとは一気呵成にすすまなければならない。途中で休んだり逡巡しては、それまでの台詞がしらけて、気の抜けたビールのようになってしまう。

 

女性と親しくなるためには、懸命で優しい口説と、ときをみた強引さと、女性が許しても仕方がなかったと思いこめる、たしかな言い訳をそなえておくことである。

 

性においては、ことさらにかまえたり、気どることなど不要である。それより自然体で、相手の男性にすべてを投げだし、自らを無にできてこそ、初めて満ち足りたエクスタシーにたどりつく。

 

プライドや教養のある女性が往々にして、名もない無教養な女に負けるのは、この自らを赤裸々にさらすという、最も人間らしく、それ故に最もわかりやすくて、男を惹きつける武器を軽視し、無視しているからである。

 

恋は出会いよりも経過が重要である。

 

いかに美しかろうと、聡明だろうと、秘所があまり魅力的でない女性は、ごく稀だがたしかにいいる。そして、あまり美人ではなく、知的でなくとも、秘めたところが魅力的だという女性もある。

 

単に女性の友人でいるだけなら、優しくておだやかであればいいが、そこから一歩すすんで恋人になるためには、どこかで勇気を出して踏みきらなければならない。

 

 

 

 

 

すべてが古び、消え去るなかで、なぜ、一篇の小説が生き残り、千年後の、科学文明はなやかな現代に住む人々の心をとらえて離さないのか。

その理由はただひとつ、千年前に書かれても、「源氏物語」は人間の変らぬ真実、とくに男女の真情をあますところなく書き表しているからである。