Javaさんのお部屋・改

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

近代秀歌

近代秀歌 (岩波新書)

【概要】
著者(監督):永田和宏

文字通り近代の秀歌を100首(以上)集めた。茂吉の『万葉秀歌』の衣鉢を継ぐ。

挑戦的な言い方をすれば、あなたが日本人なら、せめてこれくらいの歌は知っておいて欲しいというぎりぎりの100種であると思いたい。

 

歌を一首知っているだけで、花にも鳥にも、場所にも風景にも、それまでとは違う親しみを感じるものである。まことにささやかな喜びではあるが、それこそが日常の、そして生活の喜びであり、豊かさというべきである。

 

恋や旅、死など10のテーマを取り上げ、各歌につき1~2頁の解説・鑑賞文を添える。やや抒情的で思いやり深い文章に著者の人柄が感じられる。

(例:「意味もなく人恋しく、どこかで何かの恋との出会いがあるような気分は、青春期特有の思いであろう」

「「ここには無い何か」を求める心、どこかへ行けば何かに出会えそうな予感は、誰にも覚えのある青春期の「あくがれ」でもあろう」

「人間は、何か途方もなく大きな、あるいは衝撃的な事件に出会うと、そのコンテキスト(文脈)とは何の関係もない細部に意味のない注目をしたりするものだ」

「悲しみは懐かしさのなかに溶解されているようである」)


【詳細】

晶子や啄木、牧水、茂吉などは1首以上採録されている。

自分がいいと思った歌を繰りかえし取り上げ、語り続けることが歌をよみがえらせ、定着させることにつながるのだ。

 

背景を知ることによって、歌の読みの幅が出てくる場合にのみ、背景を導入することに意味がある。


<目次>

第一章 恋・愛――人恋ふはかなしきものと

第二章 青 春――その子二十櫛にながるる黒髪の

第三章 命と病い――あかあかと一本の道とほりたり

第四章 家族・友人――友がみなわれよりえらく見ゆる日よ

第五章 日 常――酒はしづかに飲むべかりけり

第六章 社会と文化――牛飼が歌よむ時に

第七章 旅――ゆく秋の大和の国の

第八章 四季・自然――馬追虫の髭のそよろに来る秋は

第九章 孤の思い――沈黙のわれに見よとぞ

第一〇章 死――終りなき時に入らむに

 

<和歌>

なにとなく君に待たるるここちして出でし花野の夕月夜かな(与謝野晶子

やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君(与謝野晶子

相触れて帰りきたりし日のまひる天の怒りの春雷ふるふ(川田順

※黒髪のみだれも知らずうちふせばまづかきやりし人ぞこひしき(和泉式部

その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな(与謝野晶子

われ男の子意気の子名の子つるぎの子詩の子恋の子あゝもだえの子(与謝野鉄幹

不来方のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心(石川啄木

東海の小島の磯の白砂に
われ泣きぬれて
蟹とたはむる(石川啄木

清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき(与謝野晶子

隣室に書よむ子らの声きけば心に沁みて生きたかりけり(島木赤彦)

たはむれに母を背負ひて
そのあまりに軽きに泣きて
三歩あゆまず(石川啄木

老ふたり互いに空気となり合ひて有るには忘れ無きを思はず(窪田空穂)

白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり(若山牧水

※わが妻は吾子の手握り死にてはいや死にてはいやと泣きくるひけり(木下利玄)

※みちのくの母のいのちを一目見む一目見むとぞただにいそげる(斎藤茂吉

りんてん機、今こそ響け。
 うれしくも、
東京版に、雪のふりいづ。(土岐善麿

鎌倉や御仏なれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな(与謝野晶子

幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく(若山牧水

ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲(佐佐木信綱

ほととぎす嵯峨へは一里京へ三里水の清滝夜の明けやすき(与謝野晶子

葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり(釈迢空

瓶にさす藤の花ぶさみじかければたゝみの上にとゞかざりけり(正岡子規

金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に(与謝野晶子

馬追虫の髭のそよろに来る秋はまなこを閉ぢて想ひ見るべし(長塚節

曼珠沙華一むら燃えて秋陽つよしそこ過ぎてゐるしづかなる道(木下利玄)

白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ(若山牧水

死に近き母の添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞ゆる(斎藤茂吉

※灰のなかに母をひろへり朝日子ののぼるがなかに母をひろへり(斎藤茂吉

終りなき時に入らむに束の間の後前ありや有りてかなしむ(土屋文明