【概要】
著者(監督):佐藤健太郎
鉄、紙、プラスチックなどの12の材料に関し、最強の材料決定戦を開催する。いずれの材料も建築、戦争、メディアなど各々の点で人間の社会や生活に変革を齎しており甲乙つけがたい。サイエンスライターらしく、材料の誕生と普及が変革の「律速」段階であることを繰り返し説く。
概して読みやすく良質な科学読み物。科学者や技術者の挿話の多くにセレンディピティと猛烈な努力が積載されており、偶然の発見と試行錯誤が基礎研究の柱であることが窺える。
【詳細】
12の材料にまつわる、神話や歴史的事件・人物・人工物のエピソードからなる。
何しろ材料というものは、丈夫で使いやすければいいというものではない。原料が手に入りやすいこと、量産ができること、加工がしやすいこと、人体に害がないこと、環境負荷が低いことなど、さまざまな要件を満たす必要がある。用途によっては、軽さや硬さ、経年劣化の少なさなどさらに多くの条件も加わってくる。ひとつの材料が世に出て、広く使われるようになるまでには、驚くほど多くの試練を乗り越える必要があるのだ。
材料のイノベーションは、そのまま人類の生活の進歩であったといっても、決して言い過ぎではないだろう。
<なるほど>
「植物は、最も生産しやすいブドウ糖をもとに、丈夫でしなやかな最高の建築材料と、次世代が育つための優れたエネルギー源の両方を作り出しているわけだ」
「現代の蚕は、摂取したタンパク質の6~7割を絹糸へと変換する、超高効率の製糸マシーンと化しているのだ」
<目次>