【概要】
著者(監督):本庶佑
ノーベル賞でおなじみ。DNA関連の生物学・医学の発展のあらましと最近のトピックについて語る。エピジェネティクス、分子標的薬、遺伝子病、ゲノムコホートなどのテーマについて触れているが、それぞれの内容が散漫で有機的な一つのストーリーとしては感じられなかったのが残念。
だが、「分子レベルまで生命体を還元して解析したことによって、われわれは本当に生命とは何かを理解したであろうか」と、近現代の分析ー綜合によって物事を理解しようとする世界観・価値観への疑義を呈したり、
「次の30年は、ヒトにおける生命現象を統合的に語ることが求められる。個体差とその表現系、またそれらのもたらす疾病とその予防・治療へと生命科学が向かうことが予想される」と、これからの生命科学の展望を示してくれたりするあたりは良い。
進化とは偶然であり優劣はないことにも触れる。
「生命の存在は、偶然性に富んだものであるという事実を認識することから、生命の価値観は新たなものとなっていく」
【詳細】
どこかで聞いたようなことも言っているよ。
- 「すべての論文を信じることは実にばかげている」
- 「何か具体的な成果を目指して研究して得られる成果より、逆に思いがけない発見(セレンディピティ)による成果のほうが、社会的インパクトが大きいのが常である」
- 「あまりにも無駄を切りつめると、将来への発展の芽をつむことになるのかもしれない」