Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

臨死体験

臨死体験〈上〉 (文春文庫)

【概要】
著者(監督):立花隆

(上)お花畑が見える、おばあちゃんが対岸で呼んでいる、無量光を感じる…などの臨死体験エピソード・研究結果を集められるだけ集めたノンフィクション。生化学・精神医学・心理学・脳科学などの知見を縦横に紹介しつつ、主観的なのか客観的現象なのか、結論を下すのを慎重に避け、オカルトなのか科学なのか決着はつかないまま下巻へ。

(下)世界中を飛び回りインタビューし、厖大な史料を渉猟する知識欲中毒者。科学的知見の集大成「サヴァデラ・アギラル」モデルをもってしても残る不思議体験。脳内現象説優位でいったん幕引き。「どちらが正しいかは、そのときのお楽しみとしてとっておき、それまでは、むしろ、いかにしてよりよく生きるかにエネルギーを使ったほうが利口だと思う」。確かに。


【詳細】
<目次>

>上

第1章 臨死体験
第2章 「至福」の光景
第3章 末期の音
第4章 「快感」の構造
第5章 医師キルデの報告
第6章 記憶の深層
第7章 「超能力」の虚実
第8章 トム・ソーヤーの変身
第9章 オメガ・プロジェクト
第10章 色を聴く
第11章 クンダリニー覚醒
第12章 時間なき世界
第13章 光の存在、光の世界
第14章 星への旅

>下

第15章 心理と論理の間
第16章 水晶玉物語
第17章 パウロの回心
第18章 ヤムラージの怒り
第19章 体外離脱とは何か
第20章 「臨死」なき体験
第21章 W・ジェームズの法則
第22章 ある登山家の奇跡
第23章 感覚遮断の世界
第24章 「脳」と「心」の関係
第25章 消える肉体
第26章 神の大きな手
第27章 シルヴィウス溝
第28章 視覚のメカニズム
第29章 死のリハーサル


<印象>

テレビの情報量では満足できない著者が大著をものした。

「白光の中を猛烈なスピードで上昇し、更に頭上の密度の濃い白光のかたまりの中に入っていった」

「その世界は、全てが愛に満ち、調和しています。そこでは全ての真理が一瞬にして把握でき」た

などの臨死体験に関する研究や談話を紹介し、最終的に

「どちらが正しいかは、そのときのお楽しみとしてとっておき、それまでは、むしろ、いかにしてよりよく生きるかにエネルギーを使ったほうが利口だと思う」

という玉虫色の結論に。

とにかく、

臨死体験というのは、シンプルなコア体験を、体験者が自分の文化の中で修飾し物語化することによって成立する」

ということだろう。

 

こういった話は体験しないと信じられないが、今のところ人間が知り得た知見では、知りえない客観情報を持ち帰るというタイプの体験は説明がつかないのは確か。今わの際には穏やかで美しい光につつまれたいと感じた。

 

ただ本書、ふらふらと好奇心の赴くままに進んで行くのでまとまりに欠け、ボリュームも冗長になっていると言わざるを得ない。

話題はオカルトやSFなんでもござれ。ヨガの行者、予言の自己実現、UFO、鍼、水晶玉占い、生まれ変わり、脳の電気刺激、感覚遮断実験、「脳外の宇宙的存在者とのコミュニケーション・ネットワーク接続」説、「一切の事象は神の自己観照」説、「神経細胞の量子場と外界の干渉によるホログラフィー像が視覚」説など、いろんな方向に話が飛ぶ。

迫撃砲、ケクレ、007、閻魔などのトリビア、聖書や文学の引用も豊富で知的好奇心を満たしたい人にいいのでは。研究の守るべき科学的態度についてもしばしば言及する。